2021年7月14日水曜日

効果的な鍼灸治療の受け方

せっかく来院されたのに、その後中途半端にしか治療に来られない方がおられるのは非常に残念です。

思っている治療と違ったのかな、効かないと思ったのかなと色々考えることもありますが、きちんと効果的な治療を伝えていないこともあるとふと思いました。

こちらの落ち度ですね。


効果的な鍼治療の受け方をお伝えしたいと思います。

①お稽古ごとのように続けること。

②病気を治したいときは週に2~3回、最低でも週に1回。

③予防、健康維持では週1回から月1回。各自の状態に応じて。


なんといっても鍼灸治療は続けることが大切です。

東洋医学はその方の持っている治る力を引き出すことに重点を置いています。

痛み止めのように飲んだら痛みが引くというものではありません。

少しづつ弱っている生命力を元に戻すことによって治していきます。

だから基本時間がかかるものと思っていただきたいです。

東洋医学の昔の文献には「3日の病に1回の治療が必要、ただ状態により長短がある」と書かれています。

この計算でいくと1ヵ月間患っている病は10回はかかるということです。



ではどのくらいで来院すればよいのかということですが、これは悪い時は薬を毎日飲むように毎日が望ましいです。

昔の医学文献や中国では1日に2回することもあります。

現実の経済状態や時間的なことを考慮すると週2~3回、最低1回はほしいところです。



健康な状態の人では鍼灸治療は10日くらい効果があり、その後落ちていきやすいです。

だからそのことを考慮して週1~月1くらいで自分の状態に合わせて来院されるとよいと思います。

当院では予防や健康維持で来院されておられる方は隔週くらいで、悪くなったときには間隔を詰める方が多いです。

2021年6月30日水曜日

鍼灸で逆子が治る。その注意点

 「逆子は鍼灸で治す方法があるよ」と言ったところ、

もっと早く知りたかったというお声を聞きました。

鍼灸師にしては当たり前すぎることなので、あえて言うほどのことでないと思っていたのです。

こちらが当たり前だと思っていることが、他の人には当たり前でないことが多いことを改めて気づかされました。


逆子の鍼灸治療を受けようかと思う方に気を付けていただきたいことがあります。

それは逆子になるたびに治療で戻さないことです。

逆子→治療→逆子→治療を繰り返してしまうと、へその緒が赤ちゃんの首に巻いてしまうことがあるからです。

逆子になったら治療していったん戻した後、逆子にならないようにケアをしてくれる治療家を選ばなくてはなりません。


ただお産に関しては本人も家族も神経質になられているので、当院は信頼関係が出来た方にしか治療をしていないことにしています。

最近不妊症や不育症が良くマスコミで取り上げられますが、最近は女性も社会的にストレスにさらされることも多いせいか、漢方的に見て身体の状態が良くない方が多いです。

そのような女性の鍼灸治療をして、流産や早産になると、すぐに鍼灸のせいにされてしまうこともあるため、信頼関係のできた方のみの妊婦さんしか治療をしていません。



「看護覚え書」フローレンス・ナイチンゲール著

フローレンス・ナイチンゲールという名前は誰でも知っていることと思います。

「クリミアの天使」と言われる看護師さんですね。

このくらいは誰でも知っていることでしょう。

でも著書を読んだことがありますかと聞かれると・・・

恥ずかしながら医療にたずさわる当院も読んだことがありませんでした。


図書館に「看護覚え書」というナイチンゲールの著書があったので読んでみました。

なぜナイチンゲールが、これほど有名で称えられているのか理解できました。

この「看護覚え書」という本は看護師が読むだけではなく、誰でも一度は読んでおく本です。

一家に一冊と言ってもいいくらいの価値があります。


何がすごいかというと、健康を保つための公衆衛生の基本がかかれているんですね。

凡人は検査や治療に目が行きますが、病気を減らし、健康を保つには公衆衛生が最も大切です。

その基本があって、検査や治療が意味をなします。

看護というのは医者に言われて注射や薬を塗ったりということだけではありません。

健康を回復するために、自然治癒力を上げるためのこと細かい公衆衛生に気を配ることも看護の大切な役割です。


今回の新型コロナ感染で手洗い、マスク、換気など公衆衛生の徹底が大切であることをしみじみ感じたことと思います。

100年以上も前にナイチンゲールは「看護覚え書」の一番最初に換気の重要性を訴えています。

病気を治し、健康を維持する基本は何かをナイチンゲールの書を読むことにより、再認識できることと思います。

是非お読みいただきたく思います。



病気が治らない人の6つの特徴

 長年臨床家をしていると様々な患者さんに出会います。

患者さんを観察していると「ああこの人は少しづつ良くなっていくな」や「この患者さんの考えではしんどいな」というのが分かってきます。

中国、春秋・戦国時代の扁鵲という伝説上の名医も治らない人の特徴を六つあげています。


①驕慢で、道理を無視することが、第一の不治である。

②身を軽んじ、財を重んずることが、第二の不治である。

③衣食の妥当でないことが、第三の不治である。

④陰陽が五臓で合併し、気の不安定なことが、第四の不治である。

⑤形容(すがた)まで衰えはてて、薬を受けつけないのが、第五の不治である。

⑥巫覡(みこ)のことばを信じて、医者を信じないのが第六の不治である。

これらのうち一つでもあれば、すこぶる治療しにくいのである。


昔も今もあまり変わっていませんね。

気をつけたいものです。

2021年6月29日火曜日

コロナ禍を恐れるあまり、身体のお手入れをしないと取り返しのつかないことにも・・・

 コロナ禍でがん検診の受診率が下がり、早期がんでの発見が出来ず、悪化してから来院してしまう危険性がニュースでとりあげられていました。

これを聞いて鍼灸治療でも同じだな、いやもっとひどいと感じました。

鍼灸院の優先順位は病院より低い方が多いからです。

コロナにかかるのを恐れすぎ、来院から足が遠のき、健康を崩す方が多く見られます。

ご年配の方は特に顕著です。

足腰が弱った、認知機能が低下したなどで施設に入らざるを得ない、自宅介護を受けなくてはならなくなった方の話をよく耳にします。


今回の新型コロナウィルスは季節性のインフルエンザよりも死亡率、重症化率が高く、決して侮れません。

しかし恐れすぎて肝心の健康管理がおろそかになってしまうと、他の病気になりやすくなり、体力も衰えてしまいます。


当院ではマスクはもちろん、ベッド周りの一回一回の消毒、換気など、コロナ感染症対策を十分に行っております。

コロナにかかるリスク以上に身体のお手入れを行うことによるリスクの重要性もしっかり認識していただきたく思います。


先ほど鍼灸治療は病院よりも優先順位が低いと書きましたが、見方によれば本来優先順位は病院よりも先に来るべきです。

順番としては

日々の自分で行う健康管理 → 鍼灸などのプロによる身体のお手入れ → 人間ドックなどの検診 → 病院における治療

という具合になります。

これは病院による検診や治療が鍼灸治療よりも劣っていると言いたいわけではありません。

検診や治療よりもまず自分でできる健康管理をし、手の届かないところは鍼灸などプロのお手入れを行うことが本来大切であることを認識してほしいということです。

コロナの感染を恐れるあまり、身体のお手入れをおろそかしてしまうと取り返しのつかないことになることもあります。

2021年6月28日月曜日

治療を受けるだけでは治らない。

 長年臨床家をしていると様々な患者さんに出会います。

患者さんを観察していると「ああこの人は少しづつ良くなっていくな」や「この患者さんの考えではしんどいな」というのが分かってきます。

一番しんどいのは「早く治して」としか言わない患者さんです。

この言葉にはいくつか問題があります。


まず、治療だけに頼り、養生や健康管理をする気がないということです。もう少し厳しく言うと治す気がないということです。

もう一つは長期を見据えて治療をする気がないということです。

こういう方はよく治療院を変え、長続きしません。

それでは治療家はその人の心身を把握することができません。


病気は呼びかけです。

今までのあなたの生き方、人生、考え方を問うています。

原因は必ずあなたの中にあります。外に原因を探ってもありません。

病を受け入れ、その呼びかけに耳を澄ませましょう。


癌(がん)と鍼灸治療③

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)』、

がんの補完代替医療 ガイドブック 第3版

の2つの医師の立場からみたがんに対する鍼灸治療の評価を見てきました。

デマや過剰広告が氾濫する中、論文によるエビデンスを基にした情報は有用であります。


ただ鍼灸を実際に行っている者からみるともう少し、評価されてもいいかなと思います。

当院の結論からすると「鍼灸でがんは治らないかもしれないが、がん患者には鍼灸治療が最も良い治療のひとつである」と考えます。

鍼灸治療は気血の流れを改善し、身体のバランスを整え、生命力高める治療です。

現代医学とは全然違う理論でアプローチします。

そこが現代医学では得られない効果を発揮するところでもあります。


昔の文献を見ると、鍼灸でがんを治療している記述も多く見られます。

もちろん治ったという記載もあります。

だからと言ってがんが鍼灸で治ると軽々しくは言えません。

がんは現代医学でも難病であるように、鍼灸でも難病です。

鍼灸で治ることもあるかもしれないが、たまたまだったのかもしれません。

鍼灸・漢方は経験医学です。

一症例としての経験であり、過大評価もまた逆に過小評価をするものでもありません。


ただ二つの文献からも、QOL(生活の質)の改善や化学療法の副作用の軽減に対して評価されています。

これは鍼灸治療が気血の流れを改善し、身体のバランスを整え、生命力を上げることが大きく貢献しているものと言えます。

西洋医学一辺倒の治療ではなく、鍼灸治療も同時に行うことにより、よりよい状態を保ち、また治癒も高めることができます。

がんにおいてももっと鍼灸治療を積極的に取り入れてほしいと思います。



がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)(PDFファイル/3.43 MB)編集 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会https://www.jspm.ne.jp/guidelines/cam/2016/pdf/cam01.pdf


がんの補完代替医療 ガイドブック 第3版【編集・制作】 厚生労働省がん研究助成金(課題番号:17-14) 「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班 独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費(課題番号:21分指-8-④) 「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」班 第3版https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/doc/pdf/cam_guide_3rd_20120220_forWeb.pdf

癌(がん)と鍼灸治療②

 もう一つ医師から見た癌に対する鍼灸治療に対する評価を見てみましょう。

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)にPubMedによる検索での癌に対する鍼灸治療の論文がまとめられています。(2000年~2014年)

以下引用です。


鍼灸治療はがんに伴う身体症状を軽減するか。

 ①痛み

    耳介鍼治療はがん患者の痛みの軽減に有用であると考えられる。さらに質の高い研究が必要。

    ②消化器症状

    鍼治療はがん患者の吃逆の軽減に有用であるとは結論付けられない。

    ③呼吸器症状

    鍼治療はがん患者の呼吸困難を軽減させる根拠はない。

    ④泌尿器症状

    鍼治療はがん患者の術後尿閉の軽減に有用であると考えられる。

    ⑤倦怠感

    鍼治療はがん患者の倦怠感の軽減に有用であるとは結論付けられない。    

    ⑥睡眠障害

     鍼治療はがん患者の呼睡眠障害を軽減させる根拠はない。


鍼灸治療はがんに伴う精神症状を軽減するか。

 ①不安・抑うつ

    鍼治療はがん患者の不安・抑うつを軽減させる根拠はない。


鍼灸治療は全体的なQOLを改善するか。

    鍼治療はがん患者のQOLを改善させると考えられる。


鍼灸治療は何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか。

    鍼灸治療はによる有害事象は低頻度かつ軽微である。


鍼灸治療は検査・治療等による有害事象を軽減するか。

    ①化学療法による悪心・嘔吐

    鍼治療は化学療法による悪心・嘔吐を軽減させると考えられる。

    ②ホットフラッシュ

    鍼治療は乳がんおよび前立腺がん患者のホットフラッシュを軽減させる根拠はない。

    ③放射線口腔乾燥       

    鍼治療は頭頸がん患者の放射線口腔乾燥の軽減に有用であるとは結論付けられない。    

    ④骨髄抑制・免疫抑制

    鍼治療はがん治療に伴う骨髄抑制の軽減に有用であるとは結論付けられないが、灸治療は骨髄抑制を軽減させられると考えられる。

    ⑤化学療法後末梢神経障害性疼痛

    鍼治療はがん治療における化学療法後の末梢神経障害性疼痛の軽減に有用であるとは結論付けられない。

    

鍼治療は予後を改善するか。

    ①生存率

    現時点で、本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。

    ②原因特異的死亡率

    現時点で、本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。

    ③無病生存率、無憎悪生存率

    現時点で、本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。



参考文献

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)(PDFファイル/3.43 MB)編集 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会https://www.jspm.ne.jp/guidelines/cam/2016/pdf/cam01.pdf


がんの補完代替医療 ガイドブック 第3版【編集・制作】 厚生労働省がん研究助成金(課題番号:17-14) 「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班 独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費(課題番号:21分指-8-④) 「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」班 第3版https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/doc/pdf/cam_guide_3rd_20120220_forWeb.pdf

癌(がん)と鍼灸治療①

癌に鍼灸は効くのでしょうか。

がん専門の鍼灸院なんて言うのもありますが、どうなのでしょうか。

昔の医学文献を読んでいるとこれは癌であろうという記述がしばしば見受けられます。

当院はもちろん鍼灸師なのでの鍼灸師としてのバイアスが入って評価してしまいます。

そのためまずは鍼灸師でない現代医学にかかわってる医師はどのように見ているか見ていきたいと思います。

厚生労働省eJIM(イージム:「統合医療」情報発信サイト)https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/index.html

がんの補完代替医療ガイドブック【第3版】の記載を見てみましょう。


鍼灸治療の臨床試験

数多くの臨床試験が行われています。

その結果、抗がん剤治療の副作用である嘔気や嘔吐の軽減効果や神経症状を和らげる効果があると報告されています。

また、嘔気や嘔吐は手術後の患者さんにも有効であったとのことです。

さらに、痛みなどの症状を改善し、がん患者さんの生活の質(QOL)の向上が認められたとの報告もあります。

ただし、抗がん剤治療における嘔気・嘔吐の軽減効果は、早期のものには有効であったが、遅延性のものでは効果がなかったとされ、

鍼灸治療に関してもさらなる臨床試験を行う必要があります。


鍼灸治療の注意点

鍼灸治療、特に鍼治療において気を付けておかなければならない点を取り上げます。

鍼を刺す鍼治療では、まれに出血あるいは内出血することがありますが、健康な人であれば問題となることはほとんどありません。

しかし、抗がん剤治療をして出血を止める細胞の血小板が少なくなっている場合や、がんが進行して出血しやすい状態の場合には、鍼治療を行う際に注意が必要です。

当然、専門資格を持った施術者に鍼治療をしてもらうことが重要です。



参考文献

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)(PDFファイル/3.43 MB)編集 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会https://www.jspm.ne.jp/guidelines/cam/2016/pdf/cam01.pdf


がんの補完代替医療 ガイドブック 第3版【編集・制作】 厚生労働省がん研究助成金(課題番号:17-14) 「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班 独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費(課題番号:21分指-8-④) 「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」班 第3版https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/doc/pdf/cam_guide_3rd_20120220_forWeb.pdf

難病・慢性病の原因「瘀血」

「瘀血」という言葉をご存知ですか。

瘀血は漢方用語で、血液が滞り、めぐりが悪くなったものをさします。

瘀血は難病、慢性病の原因になります。

瘀血が原因で起こる症状は以下のようなものがあります。


・きつい痛み、慢性痛 

・腫瘍

・舌が紫色や暗紅色 

・皮下出血斑 

・顔色のくすみ、黒っぽい

・冷えやのぼせ 

・シミ、色素沈着、鮫肌 

・月経痛、血塊

・月経周期の乱れ 

・健忘

・肩こり、首痛 など


瘀血の解消には運動で血流を促したり、甘いものや油っこいものを控えることが有効です。

治療では鍼灸はもちろん、カッピングやカッサで血流を改善します。

カッピングやカッサは鍼を使わないので、鍼が怖い人も安心して受けることができます。


血液は滞ると固まる性質があります。

そのため瘀血は放って置くとどんどん悪化し、より治りにくい病の原因となります。

また改善にも時間がかかります。

日頃の体のお手入れだけでなく、プロのお手入れを取り入れることが将来の健康を大きく左右します。