2021年6月28日月曜日

癌(がん)と鍼灸治療②

 もう一つ医師から見た癌に対する鍼灸治療に対する評価を見てみましょう。

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)にPubMedによる検索での癌に対する鍼灸治療の論文がまとめられています。(2000年~2014年)

以下引用です。


鍼灸治療はがんに伴う身体症状を軽減するか。

 ①痛み

    耳介鍼治療はがん患者の痛みの軽減に有用であると考えられる。さらに質の高い研究が必要。

    ②消化器症状

    鍼治療はがん患者の吃逆の軽減に有用であるとは結論付けられない。

    ③呼吸器症状

    鍼治療はがん患者の呼吸困難を軽減させる根拠はない。

    ④泌尿器症状

    鍼治療はがん患者の術後尿閉の軽減に有用であると考えられる。

    ⑤倦怠感

    鍼治療はがん患者の倦怠感の軽減に有用であるとは結論付けられない。    

    ⑥睡眠障害

     鍼治療はがん患者の呼睡眠障害を軽減させる根拠はない。


鍼灸治療はがんに伴う精神症状を軽減するか。

 ①不安・抑うつ

    鍼治療はがん患者の不安・抑うつを軽減させる根拠はない。


鍼灸治療は全体的なQOLを改善するか。

    鍼治療はがん患者のQOLを改善させると考えられる。


鍼灸治療は何らかの望ましくない有害事象を引き起こすか。

    鍼灸治療はによる有害事象は低頻度かつ軽微である。


鍼灸治療は検査・治療等による有害事象を軽減するか。

    ①化学療法による悪心・嘔吐

    鍼治療は化学療法による悪心・嘔吐を軽減させると考えられる。

    ②ホットフラッシュ

    鍼治療は乳がんおよび前立腺がん患者のホットフラッシュを軽減させる根拠はない。

    ③放射線口腔乾燥       

    鍼治療は頭頸がん患者の放射線口腔乾燥の軽減に有用であるとは結論付けられない。    

    ④骨髄抑制・免疫抑制

    鍼治療はがん治療に伴う骨髄抑制の軽減に有用であるとは結論付けられないが、灸治療は骨髄抑制を軽減させられると考えられる。

    ⑤化学療法後末梢神経障害性疼痛

    鍼治療はがん治療における化学療法後の末梢神経障害性疼痛の軽減に有用であるとは結論付けられない。

    

鍼治療は予後を改善するか。

    ①生存率

    現時点で、本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。

    ②原因特異的死亡率

    現時点で、本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。

    ③無病生存率、無憎悪生存率

    現時点で、本臨床疑問に関連するシステマティックレビューの報告はない。



参考文献

がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)(PDFファイル/3.43 MB)編集 特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会https://www.jspm.ne.jp/guidelines/cam/2016/pdf/cam01.pdf


がんの補完代替医療 ガイドブック 第3版【編集・制作】 厚生労働省がん研究助成金(課題番号:17-14) 「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班 独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費(課題番号:21分指-8-④) 「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」班 第3版https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/doc/pdf/cam_guide_3rd_20120220_forWeb.pdf

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